交通事故の損害賠償請求では、通常、治療費や通院交通費等といった様々な損害項目を積み上げて損害額を算出し、相手方に請求することになります。以下、主な損害賠償項目の内容を簡単にご紹介します。
下記の損害項目は一例であり、実際は、被害の実情に応じて個別具体的に請求項目を検討し、交渉・裁判をすることになります。
目次
1. 死亡事故の場合
死亡事故の場合には、被害者の相続人が、損害賠償を請求することになります。
1-1. 逸失利益
治療費のように実際に支出した費用のほか、被害者の方が事故に遭わなかったと仮定し、今後就労した場合に得られたであろう収入を請求することができます。
被害者の方の事故前の収入や主婦、学生といった個別の事情に応じて算定し、原則として67歳まで稼働したと仮定して算出することになります。
1-2. 死亡慰謝料
事故により生命を失うことになるため、生命を失ったこと自体に対する精神的損害として請求することができます。事故により大切な家族を失うことになるため、遺族の固有の慰謝料請求も認められます。
死亡慰謝料の金額は、一家の支柱である場合、母親・配偶者である場合、その他(独身者、子ども等)の場合によって、裁判上の一定の基準はありますが、事故の態様や加害者の事故後の態様によって増額が認められるケースもあります。
亡くなられるまでに入院を余儀なくされた場合には、治療費や入院雑費、入通院慰謝料等も損害となります。
2. 傷害事故の場合
2-1. 治療費、入院雑費、通院交通費等
治療費や通院交通費等、交通事故により支出を余儀なくされた損失の補償を請求することができます。
入院雑費については、1日あたり1500円を目途として請求するケースが一般的です。
また、重篤な症状を負った交通事故では、家族の付添費用や見舞いのための交通費を請求することができるケースもあり、個々のケースに応じて支払いを受けることができます。
2-2. 将来介護費
交通事故の障害として、高次脳機能障害や遷延性意識障害等、重篤な後遺症が残存する場合があります。このような場合には、将来にわたって介護費用が必要となるため、平均余命までの将来介護費を請求することができます。
近親者による介護が可能か、職業介護人を必要とする事情があるか等、個別具体的な事情に応じて日額を決め、将来介護費を算定することになります。
2-3. 休業損害
交通事故に伴う入院・通院により、収入が減少してしまった場合には、症状が治癒するまでの期間の失われた収入の賠償を請求することができます。
休業損害を請求するためには、通常、給与所得者であれば保険会社所定の休業損害証明書や給与明細書、事業所得者であれば確定申告書の控え等を用意する必要があります。
2-4. 入院・通院慰謝料
交通事故により入院・通院を余儀なくされた場合には、原則として、その期間に応じて、慰謝料が認められます。
期間に応じた一定の基準はあるものの、傷害の部位や程度によって増額が認められるケースもあります。
2-5. 後遺症による逸失利益
交通事故により障害を負い、一定期間治療を継続したものの、それ以上症状が改善しない状態を症状固定と言います。
症状固定の時点で交通事故による後遺症が残存している場合には、後遺症がなければ将来得られたであろう収入を逸失利益として請求することができます。
症状固定の判断は医師が行います。症状固定の段階で、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責保険において後遺障害等級の認定手続きを行います。自賠責保険の後遺障害等級が認定された場合には、後遺障害等級に応じて逸失利益を算定し、請求することになります。
2-6. 後遺症慰謝料
後遺症が残存した場合には、後遺症の内容や程度に応じて、後遺症慰謝料が認められます。
自賠責保険が認定する後遺障害等級に応じて一定の基準が存在しますが、事故の態様や加害者の事故後の態様によって増額が認められるケースもあります。また、自賠責保険の後遺障害等級に該当しない場合であっても、後遺症による業務上又は日常生活上の支障を主張・立証し、慰謝料が認められるケースもあります。
3. 物損事故の場合
3-1. 修理費用
事故によって自動車等が壊れてしまった場合、その修理に要した修理費用を請求することになりますが、修理費用は必要かつ相当なものに限られます。
また、物理的に修理が可能な場合であっても、修理費用が、事故当時における車両の時価に自動車登録手数料や自動車取得税等を加えた金額を上回る場合には、経済的に修理不能とされてしまい、損害として認められるのは時価相当額と買替諸費用の限度にとどまります。
3-2. 評価損
事故車を修理しても、修理技術上、外観や機能に欠陥が生じ、あるいは事故歴・修理歴によって商品価値の下落が見込まれる場合には、事故当時の車両価格と修理後の車両価格に差額が生じるため、この車両の価値の低下を評価損として請求することができます。
評価損は全車両において認められるものではありません。初年度登録からの期間や走行距離、損傷部位、車種等を考慮して判断されます。
3-3. 代車料
自動車を業務で使用している場合等、代車が必要になるケースもあります。代車の必要性がある場合には、修理又は買替えに要する相当期間に限り、代車料を請求することができます。