相続の手続きと流れとは?必要な相続手続きを順番に沿って詳しく解説

相続の手続きと流れとは?必要な相続手続きを順番に沿って詳しく解説

相続手続きの流れは下表のとおりです。この表は、家族が死亡して相続が発生したときに必要な相続手続きの流れ・手順を、死亡日から順番に沿ってチェックリスト形式にしたものです。

実際の手続きは若干前後しても構いませんが、期限がある手続きはできるだけ早く済ませるようにしましょう。死亡保険金や遺族年金、未支給年金などは、期限に関係なく準備ができれば早めに受け取りましょう。

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期日手続き内容対象者手続き先
死亡後すぐ1-1死亡診断書をもらう全てのひと病院
(事故の場合は警察)
7日以内1-2 死亡届を提出し、火葬許可を申請する全てのひと市区町村役場
火葬の時1-3 埋葬許可証をもらう全てのひと火葬場
死亡後なるべく早く1-4 退職手続きをする故人が勤めていた場合勤務先
14日以内2-1 世帯主変更届を提出する故人が世帯主であった場合市区町村役場
2-2 健康保険・介護保険の喪失届を提出する全てのひと市区町村役場
葬儀終了後速やかに3-1 電気・ガス・水道等の契約変更・解約を行う必要に応じて電気・ガス・水道業者等
3-2 NHK等の契約変更・解約を行う必要に応じてNHK等
3-3 クレジットカードを解約する必要に応じてカード会社
3-4 運転免許証・パスポートを返納する必要に応じて警察署・パスポートセンター等
3-5 年金の受給を停止する故人が年金受給者だった場合年金事務所・年金相談センター
3-6 固定資産税・住民税の請求先を変更する必要に応じて市区町村役場
葬儀終了後落ち着いたら4-1 相続人と相続財産を調査する全てのひとなし
4-2 遺言書の検認手続きを行う遺言者があれば家庭裁判所
3ヶ月以内5-1 相続放棄・限定承認の申し立てを行う必要に応じて家庭裁判所
4ヶ月以内6-1 所得税の準確定申告を行う必要に応じて税務署
6-2 青色申告を引き継ぐ必要に応じて税務署
生活が落ち着いたら7-1 遺産分割協議で遺産の分け方を決める遺言者がなかった場合なし
遺産分割協議がまとまった後7-2 銀行・証券口座の名義変更・解約を行う必要に応じて銀行・証券会社
7-3 死亡保険金をもらう故人が保険に加入していた場合保険会社
7-4 不動産の名義変更(相続登記)を行う必要に応じて法務局
7-5 自動車の名義変更を行う必要に応じて運輸支局等
10ヶ月以内8-1 相続税を申告する必要に応じて税務署
1年以内9-1遺留分侵害額請求を行う必要に応じて他の相続人等
2年以内10-1 葬祭費・埋葬料をもらう条件に該当する場合市区町村役場または健保組合
10-2 高額療養費を請求する条件に該当する場合市区町村役場または健保組合
10-3 死亡一時金をもらう条件に該当する場合市区町村役場または年金事務所
5年以内11-1 未支給年金をもらう未支給の年金がある場合年金事務所
11-2 遺族年金・寡婦年金をもらう条件に該当する場合市区町村役場または年金事務所

1. 死亡後すぐに行う手続き

家族が死亡したときは葬儀の準備などやることが多く、悲しんでいる暇もないほどに忙しくなります。死亡から数日の間は、後でもよい手続きはひとまず置いて、すぐに必要な手続きから進めていきましょう。

1-1. 死亡診断書をもらう

家族が病気で死亡したときは、死亡を確認した医師から死亡診断書をもらいます。事故で死亡したときは警察に連絡して医師から死体検案書をもらいます。死亡診断書も死体検案書も相続の手続き上は同じものです。

死亡診断書(死体検案書)は死亡届と1枚の用紙になっています。死亡診断書をもらったら、右側の死亡届に必要事項を記入します。

死亡診断書は、このあとのさまざまな手続きで必要になるため、死亡がわかった日の当日か次の日にはもらうようにしましょう。役所に死亡届を提出すると死亡診断書は手元に残らないため、あらかじめ複数枚発行してもらうか、コピーを取っておくようにしましょう。

1-2. 死亡届を提出し、火葬許可を申請する

死亡届は死亡がわかった日から7日以内に提出しなければなりません。実際には葬祭業者が提出してくれることが多いですが、用紙への記入は遺族が自ら行います。
提出先は次の3つのいずれかの市区町村役場になります。

  • 故人の死亡地
  • 故人の本籍地
  • 提出する人の住所(国外で死亡したときは、3か月以内に滞在国の大使館、総領事館または本籍地の市区町村役場に提出します)

死亡届を提出すれば、続いて火葬の許可を申請します。火葬許可証は遺体を火葬する場合に必要になるため、必ず申請しなければなりません。市区町村によっては、死亡届を提出するだけで火葬許可証が発行される場合もあります。

1-3. 埋葬許可証をもらう

死亡届の提出時にもらった火葬許可証は、火葬のときに火葬場に提出します。

火葬が終われば埋葬許可証をもらいます。埋葬許可証は、遺骨をお墓や納骨堂に納めるときに必要になります。遺骨(骨壺)を収めた木箱に入れるなどして紛失しないようにしましょう。

1-4. 退職手続きをする

故人が会社などに勤めていた場合は、死亡後できるだけ早く勤務先に連絡して退職の手続きをします。人事・労務担当者の指示に沿って手続きをすればよいでしょう。あわせて、職場の人に葬儀に参列してもらいたいかどうかも連絡するようにしましょう。

2. 相続発生後14日以内に行う手続き

住民票の世帯主の変更や健康保険・介護保険をやめる手続きは、相続発生から14日以内に行う必要があります。葬儀のスケジュールにもよりますが、葬儀が終わってからでも間に合う手続きです。

2-1. 世帯主変更届を提出する

故人が世帯主であった場合は、新たに世帯主となる人を決めて世帯主変更届を提出します。

世帯主変更届は転居や転入などの住民異動届と共通の用紙になっていることが多く、死亡から14日以内に故人の住所の市区町村役場に提出します。手続きには運転免許証などの本人確認書類が必要です。

世帯に残った人が1人だけの場合や母と幼い子供(15歳未満)だけの場合など、誰が世帯主になるかが明らかな場合は届け出の必要はありません。

2-2. 健康保険・介護保険の資格喪失届を提出する

健康保険(後期高齢者医療制度も含みます)や介護保険は、死亡した日の翌日から無効になります。家族が死亡したときは、14日以内に市区町村役場に資格喪失届を提出し、健康保険証を返却します。

死亡届を提出すると自動的に健康保険・介護保険の資格喪失手続きが行われる市区町村もありますが、その場合も健康保険証は返却しなければなりません。健康保険証は各種手続きの本人確認にも使われます。紛失して第三者に悪用されることがないように、早めに返却しましょう。

世帯主が死亡したときは、扶養されていた人も健康保険証を返却し、新たに健康保険に加入する手続きが必要です。詳しくは、資格喪失手続きのときに窓口で確認してください。

資格喪失届の提出または健康保険証の返却までに葬儀が済んでいれば、葬祭費や埋葬料をもらうことができます。詳しい手続き内容は「10-1. 葬祭費・埋葬料などをもらう」でお伝えします。

故人が会社などに勤めていて健康保険(被用者保険)に加入していた場合は、死亡から5日以内に資格喪失手続きをする必要があります。通常は勤務先に死亡を届け出れば、あとは担当者が手続きを行います(退職後に任意継続で被用者保険に加入していた場合は、加入していた健康保険組合に確認してください)。

3. 葬儀が終わったら速やかに行う手続き

葬儀が終わって生活が落ち着いても、まだまだやることは残っています。ここでお伝えする手続きには期限はありませんが、代金が自動で引き落とされることもあるため、早めに手続きを済ませましょう。年金の受給は、早めに止めなければもらい過ぎた分を返さなければなりません。

3-1. 電気・ガス・水道などの契約変更・解約をする

故人が世帯主であった場合は、電気・ガス・水道・固定電話の契約名義を変更します。それぞれの事業者に連絡して手続きをします。相続が発生すると、故人の預金口座が凍結されて自動引き落としができなくなります。引き続き利用する場合は、できるだけ早く手続きをしましょう。

故人が一人暮らしをしていた場合は、速やかに解約の手続きをしましょう。使っていなくても基本料金がかかる場合があります。

携帯電話は個人で使うことが一般的なので、使わないのであれば解約の手続きをします。このほか、習い事など会費を払っていたものがあれば、退会の手続きをします。ムダなお金を払わなくてもいいように、早めに手続きをしましょう。

3-2. NHKなどの契約変更・解約をする

電気・ガス・水道・電話のほか、NHKの契約変更・解約の手続きも忘れてはいけません。
故人が世帯主であった場合で家族が引き続きテレビを見る場合は、契約者氏名変更の手続きをします。

故人が一人暮らしをしていた場合でも、解約するまでは受信料が発生し続けます。契約者が死亡したことをNHKに連絡しましょう。なお、故人の預金口座が凍結されると入金ができなくなるため、返金がある場合は遺族の口座を伝えるようにしましょう。

このほか、必要に応じて新聞・インターネットプロバイダ・衛星放送・ケーブルテレビなどについても契約変更・解約の手続きをします。

3-3. クレジットカードを解約する

故人がクレジットカードを持っていた場合は、カードの裏面に記載されている連絡先に連絡して解約の手続きをします。なお、故人が生前に利用していた代金は、指定の期日に支払わなければなりません。

クレジットカードは盗まれると悪用される恐れがあります。また、使わなくても年会費が引き落とされる場合があります。不正利用や年会費の支払いを避けるためにも、早めに解約の手続きをしましょう。

解約の手続きが終われば、カードはハサミで裁断しておきましょう。

3-4. 運転免許証・パスポート等を返納する

故人の運転免許証やパスポート、マイナンバーカードは各種手続きの本人確認に使われます。紛失して第三者に悪用されないように、早めに(マイナンバーカードは必要な手続きが終わってから)返却の手続きをしましょう。

運転免許証は、最寄りの警察署で返納の手続きをします。死亡診断書のコピーが必要です。パスポートは、都道府県のパスポートセンターで返納の手続きをします。戸籍謄本など死亡の事実がわかる書類を提出します。

免許証とパスポートはどちらも失効の処理をしたうえで返してもらえる場合があります。故人の形見や思い出として持っておきたい場合は、返納の手続きで申し出るとよいでしょう。

マイナンバーカードについては、返却が必要かどうか自治体によって対応が分かれています。相続後の手続きで必要になる場合もあるため、しばらくの間は大切に保管しましょう。

3-5. 年金の受給を停止する

故人が年金をもらっていた場合は、年金事務所または街角の年金相談センターに年金受給権者死亡届(報告書)を提出して年金の受給を止める必要があります。ただし、基礎年金番号とマイナンバーが結びついている場合は、この手続きを省略することができます。

国民年金や厚生年金など公的年金は、偶数月の15日に前月と前々月の分がまとめて支給されます。死亡した月の分までは年金をもらう権利がありますが、死亡してすぐの時点ではまだもらえていない年金があります。これを未支給年金といい、遺族が受け取れます。

未支給年金を受け取る手続きは、「11-1. 未支給年金をもらう」でお伝えしますが、年金の受給を止める手続きと同時にすることもできます。なお、年金の受給を止める手続きが遅れて死亡した翌月分以降の年金をもらった場合は、その分を返さなければなりません

3-6. 固定資産税・住民税の請求先を変更する

故人が納めるべきであった固定資産税と住民税は故人のかわりに遺族が支払わなければなりません

固定資産税は1月1日時点の不動産所有者に課税され、住民税は前年の所得について課税されます。死亡したとしても納税が免除されることはなく、未払の税金として遺族が引き継ぐことになります。

納期限に遅れると延滞税がかかるため、納付書が確実に届くように請求先を変更する手続きをしましょう。詳しい手続き方法は市区町村役場の担当部署に確認してください。

4. 葬儀が終わって落ち着いてから始める相続準備

葬儀が終わって落ち着いた頃、目安としては四十九日法要が終わった頃から、遺産相続の準備を始めます。
自宅や預貯金などの相続財産があれば遺族どうしで分け合いますが、まずは誰が相続人になって、相続財産がどこにいくらあるかを調べなければなりません。自筆の遺言書があれば、家庭裁判所で検認という手続きをする必要もあります。

4-1.相続人と相続財産を調査する

葬儀が終わる頃には、故人の戸籍や住民登録に関する手続きはだいたい終わっています。戸籍の手続きの次に重要なものが遺産相続に関する手続きです。

遺産相続を始める前には必ず、相続人が何人いて相続財産にはどのようなものがあるか、を調査しなければなりません。

相続人と相続財産をきちんと調べておかなければ、本来必要な手続きをしないなど手続きを誤る可能性があります。隠し子など予期しない相続人が現れて、遺産相続が泥沼にはまることもありますので、注意が必要です。

相続人は戸籍謄本を基に調査する

相続人になる人は、次のとおり民法で順位が定められています。故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本をもとに、誰が相続人になるかを確認します。

  • 【常に相続人】配偶者
  • 【第1順位】子ども

  • 【第2順位】親

  • 【第3順位】兄弟姉妹


兄弟姉妹が相続人になる場合は、故人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も取り寄せて、他に兄弟姉妹がいないかも確認します。

相続人を調査した結果、隠し子や養子、前妻の子供など想定していない相続人が明らかになることもあります。想定外の相続人であっても、その人を除いて遺産相続の手続きを進めることはできません。

相続財産がどこにいくらあるか調査する

遺産相続をするには、相続人の人数のほか相続財産がどこにいくらあるかも調査します。
前もって相続財産を調査するのは主に次の3つの理由からです。

  • スムーズに遺産相続をするため
  • 相続税を正確に申告するため
  • 故人の借金を肩代わりしないため

たとえば、すぐに分かる財産だけを対象に相続をした場合、あとで相続財産が見つかったときにもう一度手続きをやり直さなければなりません。はじめから相続財産を正確に調べておけば、手続きをスムーズに進めることができます。

相続税を正確に申告するためにも相続財産の調査が欠かせません。申告漏れがあれば、税務調査を受けて相続税を追加徴収されるだけでなく、延滞税や過少申告加算税などが課される可能性もあります。

このほか、故人の借金を肩代わりしないように借金や債務保証の有無を調べておく必要もあります。借金や債務保証も遺産相続の対象に含まれます。

4-2. 遺言書の検認手続きをする

相続財産を調査するときは、同時に遺言書があるかどうかも探します。故人が家族に内緒で遺言書を残しているかもしれません。

故人が遺言書を残していた場合は、遺言書を家庭裁判所に持ち込んで検認手続きをしなければなりません。検認されていない遺言書は、このあとの相続手続きに使うことができません。

検認とは、遺言書が形式的な要件を満たしているかを確認して偽造や変造を防ぐための手続きです。内容が法的に有効であるか無効であるかの判断はされません。検認手続きは家庭裁判所に届け出てその日のうちに終わるものではなく、後日指定された検認期日に改めて家庭裁判所に行かなければなりません。検認期日まで1か月以上かかることもあるため、できるだけ早く手続きを行うようにしましょう。

検認の必要がない遺言書

検認手続きは遺言書すべてについて必要なものではありません。遺言書が公正証書であれば検認の必要はありません。また、2020(令和2)年7月10日からは自筆の遺言書を法務局で保管できる制度が始まりましたが、法務局で保管された遺言も検認は不要です。

5. 相続発生後3ヶ月以内に必要な手続き

借金や債務保証など、価値としてはマイナスになるものも遺産相続の対象に含まれます。故人が借金を残した場合は、相続人が引き継がなければなりません。しかし、相続放棄や限定承認で、借金の全部または一部の返済を免れることができます。

5-1. 相続放棄・限定承認の申し立てをする

相続放棄は、預貯金や不動産などの遺産を一切相続しないかわりに借金の相続を免れるための手続きです。限定承認は、遺産を相続するものの借金の返済を相続した遺産の範囲内にとどめるための手続きです。

相続放棄や限定承認をするには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。期限は相続があったことを知った日(通常は故人の死亡日)から3か月です。つまり、故人の借金を相続しないようにするには、死亡から3か月がタイムリミットとなります。

6. 相続発生後4ヶ月以内に必要な手続き

死亡した家族が生前に自営業やアパート経営などをしていた場合は、税務上の手続きが必要になります。相続発生後4か月以内に死亡した年の分の確定申告(準確定申告)をするほか、相続人が事業を引き継ぐ場合は青色申告を引き継ぐ手続きもします。

6-1. 所得税の準確定申告をする

所得税は翌年3月15日までに確定申告をして納税します。しかし、確定申告するべき人が死亡した場合は、本人に代わって相続人が準確定申告をします。

準確定申告の期限は、相続の開始を知った日(通常は故人の死亡日)の翌日から4か月以内です。年末に死亡した場合は通常の確定申告の期限(3月15日)が先に来ますが、その場合も死亡から4か月以内に提出すれば問題はありません。

6-2. 青色申告を引き継ぐ

家族が行っていた事業を相続人が引き継ぐ場合は、当年分から所得税を申告しなければなりません。

所得税の確定申告を青色申告で行うと、所得控除の額が増えるなど有利な扱いが受けられます。事業を引き継いだ相続人が青色申告をしたい場合は、税務署に青色申告承認申請書を提出します。家族が生前に青色申告をしていても、その効力が自動的に引き継がれることはありません。

申請の期限は原則として相続の開始を知った日(通常は故人の死亡日)の翌日から4か月以内ですが、9月以降に死亡した場合は死亡日に応じて期限が定められています。

死亡日青色申告承認申請書の提出期限
1月1日~8月31日死亡日から4ヶ月以内
9月1日~10月31日その年の12月31日まで
11月1日~12月31日翌年の2月15日まで

7. 遺産相続に関する手続き

故人の遺産を相続人に引き継ぐ手続きを進めていきます。遺産の種類が多いほどやることは増えていきますが、前もって遺産の内容がわかっていればスムーズに手続きを進めることができます。

7-1. 遺産分割協議で遺産の分け方を決める

故人の遺産は、相続人どうしで話し合って分け合います。遺言書があればそこに書かれているとおりに分け合いますが、相続人どうしで話し合って異なる分け方をすることもできます。

遺産の分け方を決める話し合いを遺産分割協議といいます。遺産分割協議は相続人全員による合意が必要です。相続人が1人でも漏れると無効になってしまうため、「4-1. 相続人と相続財産を調査する」を参考に相続人に漏れがないように確認しましょう。

遺産の分け方を決めるときは、民法で定める法定相続分を参考にすることができます。必ずこのとおりに遺産を分けなければならないというものではありませんが、話し合いがまとまらない場合は法定相続分で遺産を分けることになります。

法定相続分の例

相続人法定相続分
配偶者と子配偶者:1/2
子:1/2(複数人いる場合、均等に分ける)
配偶者と父母配偶者:2/3
父母:1/3(複数人いる場合、均等に分ける)
配偶者と兄弟・姉妹配偶者:3/4
兄弟·姉妹:1/4(複数人いる場合、均等に分ける)

遺産分割協議がまとまれば、その内容を遺産分割協議書に記録します。相続人の全員が実印を押印して遺産分割の内容に合意したことを証明します。遺産分割協議書は遺産相続のあらゆる手続きで必要になります。

7-2. 銀行・証券口座の名義変更・解約をする

家族が死亡すると、故人名義の銀行の預金口座は凍結され、引き出しや自動引き落としができなくなります。預金口座の凍結は相続人全員が同意して所定の手続きをするまで解除できません

故人が証券口座を通じて株式など有価証券を持っていた場合は、相続人名義の口座を開設してそこに株式を移管する手続きをします。基本的に故人の口座から直接換金することはできません。

預金の引き出しや証券口座の解約に必要な主な書類は、戸籍謄本遺言書または遺産分割協議書です。手続きの詳細は預け入れ先の銀行・証券会社などで確認してください。

7-3. 死亡保険金をもらう

家族が死亡保険に加入していた場合は、契約上の保険金受取人が死亡保険金をもらうことができます。

保険金をもらうには、保険会社に保険証券や死亡診断書のコピーなど必要書類を提出します。保険金を請求できる期限は死亡から3年以内ですが、生活資金を得るためにもできるだけ早く手続きするようにしましょう。

なお、死亡保険金は受取人の固有財産となるため、遺産相続で分け合う対象にはなりません。保険金をもらう手続きも単独ででき、他の相続人の同意は不要です。

7-4. 不動産の名義変更(相続登記)をする

家族の自宅など不動産を相続する場合は、不動産の名義変更(相続登記)をします。相続登記は法務局に届け出て手続きをしますが、さまざまな書類が必要です。

7-5. 自動車の名義変更をする

家族が乗っていた自動車は、誰かが引き継ぐ場合のほか処分する場合も相続の手続きをする必要があります。

普通車は運輸支局または自動車検査登録事務所で、軽自動車は軽自動車検査協会の事務所・支所で手続きをします。手続きには車検証のほか遺言書や遺産分割協議書などが必要です。

なお、家族が乗っていた自動車でも、所有者の名義は自動車販売会社やファイナンス会社などになっている場合があります。この場合は、車検証に記載されている所有者に連絡して手続きを依頼します。

8. 相続発生後10ヶ月以内に必要な手続き

相続人の数にもよりますが、遺産がおおむね4,000万円以上あれば相続税の申告が必要になります。相続税の申告期限は相続発生から10か月以内ですが、申告書の作成には時間がかかるため、早めに準備しなければなりません。

8-1. 相続税を申告する

遺産の総額が基礎控除額と呼ばれる一定の金額を超える場合は相続税を申告しなければなりません。

基礎控除額は、以下のとおり3,000万円を基礎として相続人の数に応じて増えていきます。

相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×相続人の数(相続放棄した人も含む)

相続税の申告期限は相続の開始を知った日(通常は故人の死亡日)の翌日から10か月以内です。

相続税の申告書は自分で作成することもできますが、申告に必要な遺産価値の評価や税制上の特例の適用については専門知識が欠かせません。相続税の申告が必要な人の9割は専門家に依頼しているとも言われており、相続税の申告書は専門家に作成してもらうことをおすすめします。

なお、当事務所では、ご依頼いただく相続事件に関して税理士事務所と提携し、相続税問題含めたワンストップでの解決を行なっております。そのため、相続税に関してお悩みの方は、当事務所にぜひご相談ください。

9. 相続発生後1年以内に必要な手続き

遺言書のとおりに遺産を分けたことで、相続人であるにもかかわらず十分に遺産をもらえないケースがあります。このような場合、一定範囲の相続人であれば、遺留分侵害額請求で遺留分に満たない分を金銭で受け取ることができます。遺留分侵害額請求ができるのは、原則として相続発生後1年以内です。

9-1. 遺留分侵害額請求をする

相続人のうち故人の配偶者、子供には、遺産を最低限相続できる割合として遺留分が定められています。各相続人の遺留分割合は、法定相続分の1/2(相続人が両親(直系尊属)のみの場合は1/3)です。

相続した遺産が遺留分に満たない場合は、遺産を多くもらった人に対して支払いを求める遺留分侵害額請求ができます。

遺留分侵害額請求は、裁判所などに届け出るのではなく、内容証明郵便などで相手方(遺産を多くもらった人)に直接申し出ます。当事者どうしで解決できないときは家庭裁判所で調停を申し立てることになります。

故人の死亡を知ってから1年を経過すると遺留分侵害額請求ができなくなってしまいます。故人の死亡を知らなくても、死亡から10年を経過すれば遺留分侵害額請求権は時効を迎えます。

10. 相続発生後2年以内に必要な手続き

10-1. 葬祭費・埋葬料などをもらう

家族の葬儀に対して、健康保険(後期高齢者医療制度)から給付金をもらうことができます。手続きの期限は死亡または葬儀を行ってから2年以内です。

故人が加入していた保険制度ごとの給付金の種類は次のとおりです。

国民健康保険・後期高齢者医療制度

給付金の種類対象者と金額申請先
葬祭費葬儀を行った喪主等に3~5万円
(金額は市区町村によって異なる)
市区町村役場

健康保険

給付金の種類対象者と金額申請先
埋葬料死亡した人に生計を維持されていて
埋葬を行った人に5万円
健保組合
または
勤務先
埋葬費死亡した人に生計を維持されていた人がいないとき、
実際に埋葬を行った人に実費を支給(上限5万円)

故人が家族の扶養に入っていて健康保険(被用者保険)の被扶養者になっていた場合は、家族埋葬料として5万円が被保険者に支給されます。手続きは健保組合または勤務先に確認してください。

なお、故人が業務上の理由で死亡した場合は労災保険から葬祭料が支給されます。詳しくは勤務先に確認してください。

10-2. 高額療養費を申請する

高額療養費制度では、病院などで医療費の支払いが一定額を超えた場合にその超えた部分の払い戻しが受けられます。

基準となる金額は年齢や所得、受診の状況によって異なるため、厚生労働省や健康保険組合のホームページなどで確認してください。申請の期限は診療月の翌月から2年以内になっているので、注意しましょう。

10-3. 死亡一時金をもらう

家族が国民年金の第1号被保険者(主に自営業者)であって老齢基礎年金や障害基礎年金をもらわないまま死亡した場合は、遺族は死亡一時金をもらうことができます。金額は、故人が保険料を納付していた期間に応じて12万円から32万円の範囲で定められています。

ただし、遺族基礎年金をもらえる遺族がいれば死亡一時金はもらうことができません。死亡一時金をもらうには、死亡日の翌日から2年以内に市区町村役場または年金事務所で手続きをします。死亡した人の妻が「11-2. 遺族年金・寡婦年金をもらう」でご紹介する寡婦年金がもらえる場合は、どちらか一方を選択することとなります。

11. 相続発生後5年以内に必要な手続き

故人に支払われるべきであった年金や、遺族に支給される遺族年金・寡婦年金をもらう手続きです。手続きの期限は相続発生後5年以内ですが、できるだけ早く申請して支給を受けるようにしましょう。

11-1. 未支給年金をもらう

故人が国民年金や厚生年金などの年金をもらっていた場合は、死亡した月の分までの年金をもらう権利があります。

年金は翌月以後に支払われるため、死亡してすぐの時点では未支給の年金があります。また、年金がもらえるにもかかわらず故人が年金をもらっていなかった場合も、本来もらえるはずの金額が未支給年金となります。

故人と同一生計であった遺族は未支給年金をもらうことができます。死亡日の翌日から5年以内に、年金事務所または街角の年金相談センターに未支給【年金・保険給付】請求書を提出します。

11-2. 遺族年金・寡婦年金をもらう

故人に扶養されていたなど生計を維持されていた人は、遺族年金をもらうことができます。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、条件によってどちらかまたは両方の遺族年金をもらうことができます。

● 遺族基礎年金
遺族に18歳未満(厳密には18歳になって3月31日を経過するまで)の子供、または障害のある20歳未満の子供がいるときにもらうことができます。子供のいない配偶者はもらえません。

● 遺族厚生年金
故人が厚生年金に加入していた場合にもらうことができます。
子供のいない配偶者や故人の父母なども対象になります。

遺族基礎年金のみまたは寡婦年金をもらう場合は死亡した人の住所の市区町村役場で、遺族厚生年金をもらう場合は年金事務所または街角の年金相談センターで手続きをします。

なお、寡婦年金は「10-3. 死亡一時金をもらう」でご紹介した死亡一時金との選択になります。死亡一時金をもらうには死亡日の翌日から2年以内に手続きをする必要があるため、それまでにどちらをもらうかを決めなければなりません。

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